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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)225号 判決 1957年12月03日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人成田篤郎の上告理由第一点について。

所論は、原判決は本件土地の賃借期間満了後被上告人(控訴人)がその期間の更新に応じなかつた事実を認定しているが、更新の拒絶は正当事由がなければ認容されないものであるにかかわらず、この点の主張、立証がないのに被上告人の更新拒絶を認容したことは、法律の解釈を誤まり、かつ審理不尽、理由不備の違法があると主張する。しかし、上告人が本件土地の占有権限として主張した罹災都市借地借家臨時処理法二条の賃借権については、被上告人の期間満了の再抗弁が認容され、借地法四条による更新請求権を行使した事実は、上告人の主張しなかつたところであるから、期間の満了により賃貸借は終了し、上告人はすでに敗訴を免れなかつたのである。それゆえ、原判示の更新拒絶の判断は蛇足であり、したがつてこの点に関する所論は、原判決の結果に影響がないので採用できない。

同第二点について。

所論は、本件土蔵は今後十数年以上使用に堪え得られるものであるのに、原判決が右土蔵が効用を失い減失したと判示したことは、証拠を欠くとともに理由不備、審理不尽の違法があると主張する。しかし原判決は、その挙示する証拠を総合して、本件土蔵は二棟とも建築後年数を経た上戦災にあつた関係から朽廃甚だしく、いつなんどき崩壊するか判らない位の危険状態にある事実を認定して建物としてはもはやその効用を失つたものと判断しているのであつて、その判断は正当と認められ、これに反する主張は事実認定の非難にほかならない。そして、賃貸借の目的物たる建物が朽廃しその効用を失つた場合は、目的物滅失の場合と同様に賃貸借の趣旨は達成されなくなるから、これによつて賃貸借契約は当然に終了するものと解するのを相当とする。原判決は、その説明において建物の朽廃と滅失とを混同したきらいがあるけれども、前記のように建物が朽廃により効用を失つたことを判示しているのであるから右の理由によりその判断は結局において正当であるので所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

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